ヨハネス・イッテン展-造形芸術への道

Written by kamochan October 24th, 2003

2003.8.24 – 10.13 宇都宮美術館にて開催された。

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……美しいものを感じ取りまた生み出すことを教える(学ぶ)ことは、どこまで可能か。感覚や直感や才能といった、根拠も定かでなく、定義も共約化も困難なものが、規範を探り、そこへ入り込み、そこから逸脱していく運動が、そもそも美術であるとするならば。……
(2003.8.24 – 10.13 宇都宮美術館)

今年も残すところあと2ヶ月あまり、すっかり秋の風が感じられる季節になりました。興味をそそる今回の展示は、宇都宮美術館で行われていました。まだ1度も行ったことの無い美術館で、建物が立派らしいという噂を聞いていたのでとても楽しみでした。東北自動車道を北上し、宇都宮ICで離脱、2950円也。すぐに国道119号線を南へ10分ほど道なりに走ったところで到着です。道は分かり易く、浦和ICから1時間20分くらいでした。

駐車場からは芝生の広場を抜けて多少歩き、見えてくるのが白い建物と、絵の具のオブジェです。エントランスを抜け、展示室前の木彫りのオブジェを見つつ、早速イッテン展の会場へ。左手は常設展示室でした。

さて、ヨハネス・イッテン(Johannes Itten)といえば、色彩論。バウハウスの創設者の一人としてもとても有名です。カラー・コーディネーターを目指す人ならば、その名前を知らない人は居ないでしょう。こんなに有名なのに、このような大規模な展示はこれが初めてとのこと。期待が高まります。

入ってすぐのホールには、炎の塔があります。もともとオリジナルでは完成されなかったもので、再制作されたもののようです。「色」のイッテンなので、オブジェを作っていたとは思いませんでした。全3部構成のこの展示は、まず第1部が「造形美術への道」と銘打たれ、イッテンの教育を受けたアーティストの作品が数多く並んでいます。第2部では、ヨハネス・イッテンの魅力を存分に堪能できます。初めて知ったのですが、日本美術にも興味があったようで、水墨画にインスパイアされた作品も多く並んでいました。こちらは、第3部で詳しく紹介されていました。

竹久夢二、水越松南、イッテン・シューレへ留学した山室光子、笹川和子をはじめ、多くの日本美術家との交流も深く、ドイツ語で書かれた書簡の展示もありました。また、イッテンに学んだ生徒達の作品や、自由学園の生徒の作品が数多く展示されています。

美術を教える者として長いキャリアを持ち、美術のテクニックを教えるだけではなく、ベースとして全人教育をポリシーとしていた教育者イッテンが残した言葉もさりげなく会場内に描かれていました。
その中でももっとも心に残ったのは、「添削はおしなべて独自性の芽を摘み、創造性を窒息させるものだと思うのです。訂正されると確信は萎え、失われてしまう。しかし自信を強く持ってもらわねばならんのです。」
私は美術を志したことは無いのですが、答えが明確な数学ならまだしも、創造性に沿って確かに己の信念の元に制作されたものが、否定をされる事はなかなか厳しいものがあると思います。すると、イッテンの授業は、良い意味でなかなか居心地の良いものだったのではないかなと思いました。

作品を作る者が、その理論と知識の基礎となる技術を学び、独自性と個性を発揮していくのに、最良の環境をイッテンは長きにわたって提供し続けたと思います。ツールとしての「造形理論」「色彩論」を学び、それをどう生かすかは自由。壁に掛けられた多くの作品…テキストとも呼べるでしょう…からは、そこから派生する新しい美術が生み出されていった痕があると感じました。

こういう絵を見ていると、どうしても頭に浮かぶのは、色彩と音楽の関係…EGO WRAPPIN’ がその言葉だけ近いアルバムをリリースしています。…と書くと、以前行ったソニア・ドローネ展を思い出しました。このレポートでも同じような事を書いていたような気がします。
こうして展覧会に行く回数を重ねて、レポートも書き連ねていくと、自分の嗜好が客観的に自分で分かって来て、時にはもしかしたら誰もこんなレポートは読んでないのに、あれこれ調べながら好き勝手に書いている。「俺は何をやってるんだろう?」と思うものの、こうした作業は自分自身にとってなかなか良いものだなと思います。
それはさておき。色のコントラストの研究を重ねて作られた作品群と、それを作るに至るまでの研究の過程、イッテンの人物像。もっと多くの作品と、イッテンのプロフィールを見たかったのですが、残念ながら、絶妙に物足りない感じで展示は終了してしまいました。その後、ミュージアム・ショップで、展覧会のカタログを買ってしまいましたが、分厚さの割に2000円で、ボリュームもありお買い得です。

駐車場に戻る道を歩きながら、それがなんだか分からないけれども「やってやるぞ」と思うチャレンジ精神、アイデア、創造性がわいてきました。そんな気持ちを十分にかき立てられる楽しい展覧会でした。

ちなみに宇都宮美術館の常設展と言えば、ルネ・マグリッド(René Magritte)の「大家族」に代表されるようです。貸し出されて、お出かけ中が多いらしいようですが、今回は本物を間近で見ることが出来ました。

#2003年10月24日現在、宇都宮美術館での展示を終了し、京都国立近代美術館で開催中。来年初めに、東京国立近代美術館への巡回が予定されているようです。

 

  • Photo: kamochan

ART-MEMO

2015.04.11 – 2015.06.28 東京都現代美術館にて開催された。

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